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再解析ERA6の計算が開始:ERA5から何が変わるのか
ECMWFの再解析ERA6は約14 kmの大気モデル、海洋成分、新たな変数を採用。最初のデータ公開は2027年末ごろの見込みです。
ECMWFは、コペルニクス気候変動サービス(C3S)向けの次世代全球再解析 ERA6 の本格的な計算を開始しました。大気モデルの解像度はERA5の31 kmから約 14 km になり、海洋成分と、より幅広い気象・気候変数が加わります。
最初の一般公開は 2027年末ごろ の見込みで、2007年以降 を対象とする処理区間のデータから始まります。それ以前の記録は段階的に公開される予定です。仕様と公開計画は ECMWFのERA6発表記事にまとめられています。
ERA5からの変更点
再解析は、過去の観測を一貫したモデルとデータ同化システムに組み合わせ、過去の気象を再構成します。予報の検証、気候分析、機械学習モデルの訓練に使う基準データになります。長く一貫した記録の意義は、ECMWFの再解析の解説にまとめられています。
ERA6では、再構成のシステムと入力する観測の両方が更新されます。ECMWFが発表した主な仕様は次のとおりです。
| 項目 | ERA5 | ERA6 |
|---|---|---|
| 大気の格子 | 約31 km、TL639 | 約14 km、TCo799 |
| 大気の鉛直層数 | 137 | 137 |
| IFSサイクル | 41r2 | 49r2 |
| 不確実性評価用アンサンブル(EDA) | 9メンバー+1制御、63 km | 10メンバー+1制御、28 km |
| 海洋成分 | 外部から与える海面水温と海氷 | NEMO-4海洋モデルとSI³海氷モデル、0.25°、海洋75層 |
| 積雪 | 1層 | 5層に加え氷上の積雪 |
| 出力形式 | GRIB1とGRIB2 | 全てGRIB2、WMO単位系を使用 |
| 過去の対象期間 | 1940年以降 | 少なくとも1950年まで遡る計画 |
14 kmは大気システム本来の解像度を表します。将来CDSからダウンロードできる全製品の格子が確定したわけではありません。ERA6は毎時出力を維持します。EDAの場は原則3時間間隔で、単一レベルの積算値は毎時となります。アンサンブルによる不確実性の推定は28 kmの解像度で提供されます。
格子の細かさだけでなく、観測の質も向上
ERA6では、過去の衛星記録の復元・再処理に加え、陸上、海上、上空の観測データも拡充されます。古い衛星センサーの記録から情報を取り出し直すほか、気象観測気球が上昇中に風で流される影響も考慮します。こうした改善は、観測網が十分に整っていなかった時代の再構成に特に重要です。
ECMWFは、追加の観測によって、とりわけ南半球と成層圏で解析の質が改善すると報告しています。データ同化も見直され、成層圏の気温バイアスへの対処が進められています。ERA6の科学的な進歩は高解像度化だけにとどまりません。過去を知る手がかりとなる観測と、それをモデルに取り込む方法の両方が更新されます。ECMWFのERA6発表記事で詳しく説明されています。
地表付近の情報が充実
予定されているカタログには、選択されたパラメータについて、地表から15 m〜500 mの範囲に11の高度レベルが含まれます。新たな変数には、2 mの相対湿度と比湿、直達日射量(法線面)、日照時間、都市被覆、オブコフ長の逆数、3次元の晴天乱気流、雨水・雪の質量比などがあります。標準偏差、最小値、最大値を含む日別・月別統計も予定されています。
風力資源の評価では、少数の標準高度からの外挿に頼る場面を減らせる可能性があります。太陽光分野には法線面直達日射の場が加わり、湿度や境界層の変数は需要モデルや環境モデルの情報を充実させる可能性があります。いずれも発表された場の利用例であり、特定地点での有用性は観測との比較で評価する必要があります。
初期条件を改善した海洋成分
ERA6は、大気・陸面・波浪の各成分に加えて、ORAS6から3次元の海洋初期条件を1日2回取り込みます。ORAS6は衛星観測と海洋の現場観測を用いた3D-Var同化を行います。ERA6の公開予定製品には、2次元と3次元の海洋データが含まれます。
科学的な利点は、大気と海洋の境界における状態や、海上の大気に影響する交換過程を、より物理的に整合した形で表現できることです。ECMWFの海洋データ同化の記事は、アンサンブル情報によって不確実性の推定を海洋の状態変化に追従させる仕組みを解説しています。従来のORAS5の手法に比べ、海面水温のバイアスが減ったことも報告されています。海洋の記録が充実すれば、海の状態と気象・気候との関係を調べる研究にも役立つ可能性があります。
暴風Egonの事例が示す可能性
ECMWFは、フランスのディエップ付近を通過した 2017年1月12日20 UTC の暴風Egonで変化を示しています。報告された最大突風は ERA6で38.7 m/s、ERA5で32.7 m/s、観測された最大値は 40.6 m/s でした。
この事例では、ERA6のピーク値が観測に近づいています。ただし、あらゆる暴風、変数、地点で誤差が一律に減ることを示すものではありません。気象影響のバックテストでは、代表的な事例群について、現象の強さや発生時刻の変化が結果にどう影響するかを確かめることが重要です。
公開が段階的になる理由
ECMWFは10年ごとの区間を並列に処理します。各区間には、長期的な状態の影響が残る成分で不連続を抑えるため、直前の1年間のスピンアップを設けます。2007年と2017年に始まる区間は処理中で、1987年と1997年の区間が続く予定です。各区間の完了には1年強かかると見込まれています。
2027年末という目標は最初に公開される区間を指し、全期間のアーカイブではありません。ERA6は少なくとも1950年まで遡る計画です。一方、ERA5には1940年代のデータも含まれています。ECMWFは十分なERA6データを公開した後にERA5Tを置き換える計画ですが、移行日と ERA6Tの提供遅延は未確定です。
気象データの利用にとってのERA6の意義
再解析は、気象に左右されるさまざまな判断の基礎となる過去データです。強風の極値、日射、湿度の表現が変われば、立地の気象リスク評価やエネルギー資源量の推定、需要モデルに用いる気象変数にも影響します。ERA6の細かな格子と新たな変数は、こうした分析をより詳しく見直す機会になります。ただし、格子が特定の地点をどの程度表現できているかを判断するには、引き続き現地の観測が欠かせません。
予報検証や機械学習では、評価や訓練の基準となるデータそのものが変わります。ERA5とERA6は共通期間で比較し、単位、積算時間、空間サンプリングを揃える必要があります。過去の再構成が改善すると、同じ予報でも評価値が変わることがあります。利用した再解析のバージョンを記録しておくことで、結果の再現性を確保できます。
現在の業務や研究で過去データが必要な場合は、GribStreamのERA5ページで利用可能なアーカイブを確認できます。ERA6の最初の一般公開は2027年末ごろの見込みで、GribStreamでの提供開始日はまだ発表されていません。2026年9月6日時点のCDSカタログにはERA6のコレクションがなく、最終的な配布カタログとデータセットのライセンスは未確定です。
出典
- Hersbach et al.: ERA6 reanalysis is in production、ECMWF Newsletter 188。仕様、計算の進捗、日程の主な出典。
- ECMWF Newsletter No. 188 — Summer 2026、刊行情報は2026年8月。
- Summer 2026 Newsletter published、2026年9月4日のECMWF発表。
- Reanalysis: past, present and future、再解析の背景。
- Advancing ocean data assimilation for climate reanalyses、海洋システムの背景。
- Copernicus Climate Data Storeカタログ、2026年9月6日確認。
